食菊日記


用意するもの
・食菊
お酢
・はらへり
なお、食菊は黄色のものでもいいですが、
薄紫色のものを強く推奨します。




淡くて上品な薄紫色を、目で楽しむところから始まります。
花っこの芯を指でつまみ、花びらを摘みます。
指先と手のひらで、花びらの質感を楽しみましょう。
摘む、なんて言葉を使ったけれど、「むしる」の方が適切です。
花びらをむしっているときは、何も考えていません。
食菊をむしる、すると、頭も心も空になる。指だけがせっせと動きます。
そして、無心でむしると、いつのまにか、食菊の小さな山が目の前に出来ます。




大きな鍋に水をたっぷり入れて、火にかけます。
沸騰したら、すこしお酢を入れる。
すこし、というのは、おちょこ一杯分くらいです。
さわやかな酸っぱさが鼻を通って、さらに腹が減る。
そこで、先程むしった菊の花びらを一気に鍋に入れます。
花びらは軽いので、湯にくぐらせても浮いてきます。
やきもきしましょう。
湯っこにくぐらせたら、ざるにあける、ひゃっこい水でしめる、絞る。




一回目は、何もつけずにそのまま戴きましょう。
菊の香り、色、苦味、甘味、なにより、しゃきしゃき。しゃきしゃき、しゃきしゃき。
歯ごたえが最高です。
二回目は、お醤油でどうぞ。
三回目以降は、白和えなどにしてもよいです。


こんなにうまい菊を食べないなんて、
もってのほかです。
みんなで秋を喰らいながら、「食べないなんて、もってのほかだぜ」って言い放ちましょうよ。



黄色の菊より、紫のこの菊の方が私は好きだな。
食菊好きの若者にあまり会わないので、
紫の菊の美味しさを家族内(相手は主にじさま)でしか楽しめないでいます。
「もってのほか」好きのボーイズ・アンド・ガールズ求む。
しゃきしゃき言わして合奏しましょうよ。輪唱もできそうだ。


「もってのほか」は、今が旬です。