あなたもそのままがいい

先週の月曜日、鈴木常吉さんのライブに行ってきました。
大好きなカフェgomashio kitchenさん主催の「淋しい歌合戦」です。


みなさまは、『深夜食堂』を読んだことがあるかな。
去年ドラマ化されて、その主題歌を担当していたのが常吉さんです。
秋田はTBSが映らないのでドラマ版を見たことはないのですが、
漫画は好きで、今のところ出てる5巻までは手元にあるんだけど、
読んだことないひとがいたら貸したいくらい、いい漫画です。



常吉さんは、アルバム『ぜいご』の曲をたくさん歌ってくれたんだけど、
その声と声量であっけにとられてしまった私は、歌を聞いてる間なぜか、
走る逞しい馬を連想してた。ふとくて、きよらかな、たくましい声。
『ぜいご』おまけCD−Rの曲「水の中の女」や、
つれれこ社中時代のアルバム『雲』の「鉛の兵隊」「トリちゃんの夢」も歌ってくれた。


歌っている時に左足で、たんたんたんたん、とても規則的なリズムを取る常吉さん。
酒と一緒にメトロノームまで呑んだのかも、というくらい整ったリズム。
歌の旋律と、アコーディオンの千鳥足のようなリズム、左足でとる静かな四拍子。
たんたんたんたん、いろんな音が心地よくて、うっとり、すこし眠くなった。


歌い終わると電池が切れたみたいに、かくん、と頭だけ下げて常吉さんはお辞儀する。
曲と曲の間には、「まあ、別にいんですけどね」という言葉と一緒に、
どこかおかしな話をしてくれた。聞いてたみんなで、くすっと笑った。
話すことに、派手さや奇をてらったところは全然なかった。
常吉さんは「喋りが上手じゃない」と言ってたけど、
うまいとか下手とかじゃなくて、人柄が出てて聞いてて楽しかった。
飾らなくてもこんなに素敵だし、そのままでいいんだ、
私もそのまんまでいいのかなーなんて思ったりした。


すでに演奏した曲をまた弾いちゃって、演奏し直したと思えばまた間違う常吉さん。
おちゃめなことこの上なし。
茶目っけや愛らしさ、常吉さんから学ぼうと思いました。



常吉さんのライブのこと、一週間経っても上手に言葉にできない。
私の持ってる数少ない形容詞を、こっそりごっそり持っていかれたような状態です。
ライブのことは上手に書けないけど、もし私の周りに寂しいひとがいたら、
一緒に常吉さんの歌を聴きに行こうよって誘うだろうな。
聴いたらきっと、寂しいけど寂しくない、って変なあったかい気持ちになるだろうな、
確信を持って言えるのは、そんなことです。
(そもそも、寂しくないひとなんているのかしら)
ああ、そこの寂しいひと、常吉さんの歌を一緒に聴こうよ。



打ち上げで握手をしてもらったら、手が大きくて驚いた。
大きい、にも種類があるけど、常吉さんの手はへらたくて薄くて、
伸ばし棒でごろごろしたような薄い手のひらだった。


二人で一緒に写真撮ったのに、私はまばたきが多いので、今回も見事に半目でした。残念。
「まあ、別にいんですけどね」、なんて控えめに言って、常吉さんに写真を贈ろうと思う。