豆太郎

これあげる、と、彼氏がくれた小さなビニール袋には、
黒胡椒の粒みたいな小さな種が20個くらい入っていました。
花っこじゃなくて種を贈るなんて、まあなんと手間のかかる贈り物だろう。
私はこれまでサボテンを腐らせたことがあるくらい、植物を育てる知識もなく意欲もなく、
かなりのずぼらな性格も相まって、花っこについては買うか野草を眺めるかのどちらかでした。


でも、湯沢に帰ってきてからの2年半の間に私は、
祖父や母が手をかけて育てて、逞しく可憐に咲く植物を沢山たっくさん見ました。
決まった時期に決まった植物が庭で咲くたびに、季節を感じて嬉しかった。
それとか、瀕死の植物を甲斐甲斐しく世話をした結果、よみがえっていくのを見たときは、
人と同じかもしれない、植物を育てるってすごいな、と
胸が高鳴ったし面白いなって感動したものです。
だから、花っこや食べられるもの、きっかけがあれば育ててみたいなあ、と、
庭で伸びる朝顔の蔓を眺めてはそう思っていた今年の夏、
種をもらったのは、なんというかタイミングの素晴らしく良い贈り物だった。



昨日もらって、早速今日、じいちゃんが使い余して転がっているプランターを適当に洗い、
300円くらいの適当な土をホームセンターで買いました。
はじめてだからと気合入れすぎると、全然うまくいかないというのを、
これまで様々な場面で失敗しては痛いほど学んできたので、「気張らない」が行動指針です。


何の花っこの種かわからないし、彼氏に聞いても教えてくれない。
ネットなんかで調べることもせず、知らないことはいいことだなあ、
花っこが咲くまでわくわくしようと種を蒔いた。
植物の名前に疎いので、花っこ咲いても結局わからないかもしれないけど。



ああ、楽しみだなあ、
種がころころして小さくて可愛いし、元気に育ってほしいなあ、
ということで、「豆太郎」という名前にした。
名札は、魚のトレーを適当に切って作りました。万事適当。
花っこが咲いたら、ここに写真でも載っけよう。
まずは、土の中の豆太郎。
ああ、プランターがすすけた色して汚い。でも花っこ咲いたらなんでもいいや、万々歳。