Across the universe

我が家の庭ではやっと、ハナズオウとハナカイドウが咲きました。
本当はこの時分の庭は、狭いながらもいろんな花っこが咲いて、手入れをするじいちゃんも笑顔で、
それを眺める私もいい気持ちでいたのですが、今年はちょっと景色が別でした。
豪雪で折れてしまった枝が多くて、花が咲いても空が見えるくらいすかすかだし、
折れた木や枝を拾い集めるじいちゃんの背中が寂しい。
枝をゴミ袋に一本ずつ入れていき、腰を反らして空を仰いで、ため息をつく。


数日間に渡った枝拾いが終わってから、じいちゃんは空いた鉢を持ってきては柔らかい土を入れ、
なんかの種を蒔いたりと熱心に動いていました。反動というやつだ。
で、あっという間に鉢の数が増えました。じいちゃんも満足げです。
庭に出て、「何のタネ蒔いだが聞がねでおご、花っこ咲ぐな楽しみだなやー」なんて私は話をしながら、
鉢を端から見ていたら、明らかにひとつ変ちくりんなやつがあることに気付きました。
その怪しげな木は、葉っぱ(茎?)は緑なんだけど、ぷくぷくしていて全然かわいくないのです。
葉っぱ部分は、ゆでたマカロニにそっくりです。緑のマカロニ。
で、全体的に、そよ風が吹いたみたいにすこし斜めになっている。
怪しいので質問しようと思ったら、じいちゃんは問わず語りで説明を始めました。


聞くと売り場で初めてそれを見たじいちゃんも、やっぱり気になった。
不思議な風貌なので、売り子になにかと尋ねた。
すると売り子が言うには、
「正式名称は分からないが、“宇宙の木”とか呼ばれているらしい」
宇宙の木な、おもしぇんたながあるもんだんしなー、
怪しげな木に関心を覚えたじいちゃんが、
花は咲くのかと尋ねると「咲くらしい」
大きくなるのか、「大きくなるかもしれない」
鉢はもっと大きいものに変えた方がいいのか、「そうかもしれない」
どこまで聞いても、≪らしい≫、≪かもしれない≫、≪ひょっとすると≫
がついてきて、木のあれこれは聞けば聞くほどわからなくなる。
じいちゃんは面白くなって、宇宙の木を購入。
膝株くらいの大きさの木で千円。
家に持って帰ってきたら、鉢が小さすぎてころころと倒れるので、
空いた鉢に入れ替えて購入年月日を記入。



…そこまで聞いても、結局、宇宙の木というやつがなんだか私にはさっぱり分からない。
宇宙と言われて見れば、宇宙っぽい気がしてくるようだけど、やっぱりしない。
売り子は宇宙の木について全く分かっていなかったけど、
腰の低さも良かった、丁寧だった、と木以外を褒めるじいちゃん。
売り子が知っているのは木の通称と値段だけなのに変なこともあるもんです。
あれもこれもそれも変な気がするのは、きっと宇宙の木のせいだろう。


ひょっとすると花が咲くらしい、大きくなるかもしれない木について、
ネットでちょいちょいと調べればすぐわかるんだろうけど、
知らない方が楽しそうなので、検索しないことにした。
咲いたら、ここに写真を載せるかもしれないです。
知っている方や植物に詳しい方、
コメント欄で教えてあげようなどと、ゆめゆめ思ってはなりません。