距離を保つ間柄

わたしが畳の上でごろんと寝っ転がっているとき、
うちの犬は少し近寄ってきては静かに隣に来て、
これまた静かに座りこんで、ふせをする。
そんで犬は、自分の体がわたしにくっつかるようにして座るんだ。
わたしのふくらはぎの裏と、犬のおしり、という具合に。
あるいは、犬の横っ腹と、わたしのもも。
どこんちの犬もみんなそうなのかもしれないけど、
どこかくっついてると安心するんだろう。
わたしも喋らないし、犬も吠えない。
昼下がり、畳の目、時計のちくたく、外はじりじり。



犬も寂しいのか、そんな風に思って話しかけても、わたしを無視し続ける犬。
名前を呼んでも耳しか動かさない。
何回呼んでも聞こえないふりをするときに、
犬に、餌をあげるときと同じ声・同じ音で「ほらほらー」って話しかけると、
すぐこっちを向くんだ。なんて野郎だ。
そんなんだったら横に座んなきゃいいのにさ。



犬と猫、どっちが好きかと聞かれたら、
(いつもその時の気分で答えてしまうけど)
相当悩んでから、うーん、猫、と答えるわたしには、
うちの犬のよそよそしい性格が結構合っていると思う。
呼んでも聞こえないふりをして、臆病で小心者で、
たいして嬉しくなくても、仕方なくしっぽだけ振ったりする犬。
ちょっとわたしに似てるかもしれない。


そんな犬と、わたし、
ほんとはもっと仲良くてもいいんじゃないか、とも時々思うんだけど、
つかず離れずの他人行儀な間柄のままでもいいかな、と思ったりもする。
ひとりの時間、ほしいしね。



そんな我が家の犬はマルチーズ、名前は、ぽちです。
これからも、お互い、一人と一匹にしあう間柄でいたいと思います。
なあ、ぽちさん。



せば、まんづ。